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皆が羨望の眼差しと期待を篭めた視線を寄越す。
勇者としての立ち姿を求める、貴族としての立ち振る舞いを見ている。
国政にも携わり、国の資料を手に取り眺める。
自分の採決に、ペン先に未来が関わっていく。
人が王が国が圧し掛かって来る。一人の背中に。
「重いよ、今度はそっちも背負うのはかなりキツイ、かな」
気付いたらペン先が震えていた。これで正しいのか、と。
自分の決定は間違っていないのか? と自問自答の繰り返しだ。
「情けないんだ。今頃気付くなんて、どこか他人事で物事を見ていた。僕は関係無いって」
責任は重く重く圧し掛かる。誰にも手を伸ばさず一人で歩こうと無理をする。
足が重さで震え、膝を屈する。腕が震え、手に汗が滲む。
到底一人で抱えられる重さではなかった。
「ロザリンドが居ます。頼って下さい、主様」
強くは無かった。一人で歩けるほど。
だからロザリンドに命令をして、カオルは楽になった。
後ろから少し荷物を取って貰って背中の重圧が軽くなった感覚を覚えた。
背後にはロザリンドがいて妖艶な笑みを浮かべている。
「これからは、頼るよ」
それがどれだけ心強いかを知ってしまった。
カオルも学ぶべき時。
人に頼り、周りを見る必要があるのだとロザリンドに教えられた。
一人ではないと。
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