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時計の長針が十二を少し過ぎた頃。 流は食堂に入ると、関係者以外立ち入り禁止の紙が貼られた扉へと足を進めた。 そして躊躇うことなくドアノブを掴み中へと入る。 室内に目をやれば想像通り、椅子に座って雑談している二人がいた。 「あ、なっちゃん!おかえり」 「遅かったな。授業に出てたのか?」 ニコニコと満面の笑みを浮かべた綾と柔らかく微笑んだ辰樹に迎えられ、流も表情を緩ませる。 温かくて、優しい場所。 流のバイト先はそういうところだ。 「その、色々ありまして……」 理事長室でのことから、先程の風紀委員室までのことを簡単に伝える。 意識を無くしていたことは心配させるだろうと思い省きはしたが、それ以外は全て話した。 そして、流は重要なことを伝えなくてはならない。 「あ、あと再来週から、定期考査があるみたいで……お休みを」 「テスト!?あああ……この学校のテスト勉強大変だもんねぇ……。なっちゃん、遠慮しないで休んで勉学に励んで!特待生だからもっと大変だろうから無理しないで!」 「過剰反応すぎるだろ。まあ、綾の言う通りだ。こっちのことは気にせずテスト勉強頑張れよ」 「あ、りがとう……ございます」 頑張れ頑張れと、綾には抱きつかれ辰樹には頭を撫でられた。 可愛がられ、甘やかされている。 自然と緩んでいく口元を止められないままに、流は実感する。 紛れもなく、今自分は幸せなのだ。 「よし、流が一番取ったらご褒美だな」 「ご褒美!なっちゃん、考えておいてね」 「あ、の……それなら、綾さんの作ったケーキと、辰樹さんの作ったご飯……三人で、食べたいです」 テスト期間中、彼らと会えないのは流としても寂しい。 けれど、約束さえしていれば楽しみに出来る。 そもそも兄弟と思ってくれてもいいと言ったのはこの二人だ。 誰に言うでもなく、心の中で言い訳のように言葉を連ねる程には、おそらく流は冷静ではない。 それだけ、このご褒美に対し勇気を出して甘えてみたのだ。
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