5人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
人口４５７人。
秋田県の山城工業高校に入学し、３年間無敗の伝説を打ち立てた。
いくつもの島が連なる長崎県の五島列島。
その傍に寄り添うように浮かぶ小さな島、平良島（ﾀｲﾗｼﾞﾏ）。
大スターを輩出したのはそんな小さな田舎町だった。
世間で騒がれた青年も、故郷に戻ればただの１人の悪ガキ「愛ちゃん」だ。
素顔を隠すための帽子もサングラスもいらない。
宿泊施設のないこの島にはマスコミが押し掛けてくることもない。
「おふくろ、ちょっと学校まで行ってくるけん。」
リュックに入れたバスケットボールが背中で弾む。
久々に見る母校。
でこぼこのグラウンド。
ネットがはずれたままのゴールが懐かしかった。
息を整えながらリュックからボールを取り出した彼は、うずうずと胸の底から湧きあふれてくる感情を抑えることができなかった。
初めてダンクに成功したのはもう十数年前のことだったが、はっきりとそのときのことを覚えている。
まるでゴールの上空から、自分のダンクする姿を眺めているかのようだった。
そう、今このときと同じ―――。
最初のコメントを投稿しよう！