再会は昼間の居酒屋で

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 タイムカプセルに詰まっているのは、いい思い出ばかりとは限らない。人によっては黒歴史だとか、不発弾だとか、そんな酷い言われようの代物が埋まっている。  僕はと言えば、タイムカプセルを埋めた小学生時代にこれと言ったいい思い出もなければ悪い思い出もなく、それはそれは普通に未来の自分に宛てた平々凡々とした内容の手紙だった筈だ。 「あああ……! もう、マジ、掘り起こされたくなぁい!!」  真昼の居酒屋。隣の席の山本さんが、烏龍茶を片手にテーブルに突っ伏した。 「……」  僕は黙って、山本さんの様子を眺めながら心の中で「ご愁傷様」と合掌して、テーブル越しの馬鹿騒ぎに目を向けた。まだ昼間だというのに、僕が居る居酒屋は賑やかだった。 「ほら一気! 一気!」 「もっと飲め飲めー! ギャハハハハ!!」  何処の大学の新歓コンパだとツッコミたくなるが、これでも一応小学校の同窓会というもので、一部の人間を除いてはかれこれ15年ぶりの再会を果たしたメンバーばかりだ。だというのに、よくもまあ昼間から馬鹿なノリで飲めるものだと、オレンジジュースを飲みながら冷ややかな視線を送る。  そんな僕の視線もお構いなしに、阿呆なやり取りは続く。完全にテンションが夜の飲み会だ。  ――なんで、参加したんだろう。僕。
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