プロローグ

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「ブッヒーー、ブヒヒヒヒィー」 豚達の呻き声とともに、泥とエサの匂いの媚びりついたトラックが走り出す… そのトラックは真夜中に生い茂った山道を走っている。トラックを運転するハゲのオヤジと助手席に座っている前歯のない息子は、ニヤつきながら豚の相場評カタログを見つめていた。 「おいっオヤジ、また養豚の盗みに成功したな。」と、前歯を隠しながら息子は語りかける。 すると、オヤジはハゲを気にしながら、鼻を高くして語りだす。 「ひひひひぃ、豚を盗むなんざ容易い事。豚を生かすも殺すも俺達次第、豚の首は俺達のもの。まぁ、首がどこにあるかもわかんねぇけどなぁ。ブはははーブはははーブッヒャブッヒャ。」 「あとは、闇のバイヤーにでも売り捌くだけだなぁ。オヤジ。」 「左様……今日はうまい酒が飲めるな。ブははは、は?ん?、なんだあれは?」 暗闇の中、一筋の光が見えた。その光はだんだんこちらへ向かって近づいて来ている。 「おいっ何か来ているぞ。おいっ何だあれは。」 オヤジが身震いする中、息子は欠けた前歯を露出し、目を瞑ったまま問いかける。 「流れ星じゃないの、オヤジ?」 「おいっ何寝ぼけた事言ってんだ。あれにぶつかると、死ぬぞ。目を見開け。」 その瞬間、一筋の光が消えた。 光が消えるとともに、息子は目を開け、運転席の方に目を向けた。 「ほらな、オヤジが寝ぼけ過ぎなだけなんだよ。なっ。」 そこには、ゴリラがいた。
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