Heart's Shop

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Heart's Shop

 『ハーツ・ショップ』  いまどきのかっこいい筆記体がそのお店の看板に踊っている。  そのお店は僕の家の隣に昨日やってきて、今日学校から帰ったころにはもう開店の準備は万全のようだった。  店は昔コーヒー専門店でその残りがあり、とてもおしゃれだ。ショーウィンドウの中には多種多様なお守りらしきものが誇らしげに並んでいる。その端にある小さな黒板の『当店限定』という文字に僕の目は引かれた。その字の下にはこう続いていた。 『心で悩みのある方必見!心の売り買いしております。』 「心の売り買い?」 「君、心の売買に興味があるのかい?」    急に話しかけられ、僕は慌ててその声がした方をみた。  いつの間にか店の扉が開いており、そこから一人、男が出てきていた。黒いスマートな長ズボンに白いワイシャツで、黒いひもリボンをつけたその男はなかなかかっこいい。 「あ、いえ、別に・・・」  心の売買なんてそんな怪しいもんに関わらないほうがいい。 「では、これで・・・」  男に何か言わせる前にそう言って、急いで家に帰ろうとした。これがいけなかった。 「君、隣の家の子なのか?」 「え?」  僕が振り返ったときには、男はすでに僕の腕をしかと抱きしめていた。
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