第21章 その先には

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「あの歌は、あの男の為に弾いていたんだろ?。だから、あきらめたんだ……どんなにノエルを繋ぎ止めても、常にあの男がいるんだと。どんなに想っても……死んだ人間には勝てない」 難しい顔をして話し出したのはユーリの事。 「ち、違うわ。確かに昔はユーリが私のすべてだった。でも今は違う。今はアンリだもん。あの歌もアンリの為に歌ったんだよ」 誤解されていたとは思わなかった。 私がユーリを愛しているからアゲートへと帰るのだと、そう思わせてしまったんだ。 アンリを不安にさせていた。 「あの歌は、あの演奏はアンリの為だけのものよ!私の気持ちを聞いて欲しかったから。言葉に出来なくて、どうしたら良いかわからなかったの。だから……」 何度も何度も繰り返した。アンリが、わかってくれるまで叫び続けるつもりだった。 「ごめん……泣かないで」 涙で頬に付いている髪をアンリの長い指が払ってくれる。 「じゃあ、どうしてアゲートに帰ると?」 言って良いものか迷ってしまう。アンリと話せと背中を押してくれたのは、紛れも無いシーラだったから。 チラリとシーラに視線を送るが遠くて全然表情が伺えない。 分かる事は、この場にいる皆が私達の動向を見守っていると言う事だけ。 「ノエル……」 催促するようなアンリに、心の中でシーラに謝る。 「シーラと約束したの。ゴンドラに乗せてくれる代りに……アンリの元を去るって」 .
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