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「え……それだけ?」
意外だったようでアンリが項垂れ私の頭を抱き寄せる。
「それだけって、私には重要な事だもの。人との約束は守らないと……それにアンリを好きだと知られたら……シャルワ様からアンリにお咎めがいくかも知れないわ」
それが何よりも怖かった。またアンリだけが罪を背負わされるかも知れないと。
「不安になったの。また前の時みたいにシャルワ様にバレたら、アンリが咎を受けると」
今だって、皆の前で抱き合っている事自体罪かも知れない。
「……ノエル心配しなくても良いよ、その事なら。何も問題ないから」
問題ない?そんな事無いと思うのに余裕を見せるアンリに釈然としない。
「ノエル……結婚しよう」
驚きすぎて反応出来なかった。
ただ、時間が経つにつれて、アンリの強張ったまま不安で揺れる瞳を見ていると胸が苦しくなり込み上げてくる。
嬉しくて……嬉しくて、ひたすら涙を流しアンリを困らせてしまう。
「嫌だった?なら、いつまでもノエルの気持ちが変わるまで待つから……」
何を勘違いしたのか、悲しそうに私を大きな胸に閉じ込める。
「そんなに待たなくても良いから。アンリはいつも優しすぎるよ。私を甘やかしてばかり……一緒にいても良いの?」
「……もちろん、ノエルじゃないとダメなんだ」
初めて会った時と同じ、あの天使の笑みは、私の心をまた奪った。
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