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「貴方様だからこそ…ですよ?
日々豊臣の為に身を削る貴方様にゆっくり休んでいただきたい…兄と私が居るのだから、貴方様がゆっくり休めるのか心配ではありますが…。」
今の三成は誰が見ても可愛らしく映る…そう考えながらも、彼が心配している事について己や兄が日頃から豊臣の為にとその身を削る三成に休息の時間を与えたい…そう二人で考えた事を伝える。
三成は綾女の口から語られる豊臣兄妹の己を気遣う優しさに感動したのか、目を見開いて立ち止まり言葉を失っていた。
何か礼の一つでも言わなくてはならないのに、感動するあまり言葉が出てこないのだ。
「何も言わなくともわかっていますよ」
まだ幼い三成の素質を見極めた兄の秀吉が、彼を豊臣に連れ帰ったときより共に居た仲だ。
何も言わずともなんとなく察しれる部分もある、三成は今秀吉や己に強い感謝の念を抱いている……それは間違いないだろう。
綾女は立ち止まる三成の側に寄れば小さくクスリと笑い、まるで我が子を見るような眼差しで彼の事を見つめ、そしてその白い頬へと手を伸ばしゆっくりと撫でる。
三成は思い出していた。
こんなに温かな日々が訪れる前の、酷く荒れた日々を…。
三成は幼い頃、親からの愛を十分に受けず育った。
白い毛髪、色素の薄い瞳、白い肌…三成を生んだ母は彼を忌み嫌い蔑んだのだ。
彼は小さな体を痛めつけられ、親に対し強い憎しみを抱いていた。
――…誰も助けてはくれない絶望。
力がなくば己は生きれない、幼い三成は唇を噛み締め力を持たない己を罵った。
お前は弱い、お前は何もできない、お前は……生きている価値はない、と。
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