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◇
専用の転移魔法陣とやらを潜った先にあったものは、薄暗い倉庫のような場所だった。
魔術に使われそうな用具が、部屋中所狭しと散らばっている。
「…どこだここ」
「学校の隠し部屋。学生時代に協会への行き来が面倒だから作っといたんだ」
声の方へと肩越しに振り返ると、魔法陣から頭部だけ覗かせたナインがキョロキョロと部屋を見渡していた。おい、気味悪いからやめろ。
「うわー懐かしー。そのままじゃん」
ナインは足元の器材など気にも留めず、乱暴に踏み荒らしながら前へと進んでゆく。いいんだろうか。後で何か言われたら困るので俺は慎重に足場を探して前へと進む。
やがて正面の壁に到達し、ナインは設置されていたレバーに手をかけた。
「よっ…と」
一気にレバーを引くと、ガコン、と何かが起動する音が鳴る。
直ぐに壁一面が揺れ動き、埃を舞い散らせながら壁の一部が左右に開いた。
現れたのは赤い絨毯が敷かれた豪奢な雰囲気の一室。高そうなアンティークが並べられた木製の棚。
中央にそびえる黒くどっしりとしたソファー。
だがそれら全てが決して派手ではなく、厳かな雰囲気を醸し出している。
え、いや、何だここ。
右を見る。
そこには眼鏡を掛けた30代くらいの優男が、デスクに腰掛けたまま驚愕の表情でこちらを見据えていた。
まるでドッキリ大成功みたいな反応だ。まさかアポ無しなんだろうか。
「あ、学院長。おひさ」
「ナ、ナインさん…ですか…?」
「うん、久しぶりだね」
気軽に挨拶をかわすナイン。
学院長と呼ばれた人物も一応驚いてはいるのだが、通報したり敵意を向けて来る素振りは今のところ見せない。どうやら知り合いらしい。
というか、学院長つったか今。
学院長って、つまり学院長だろ?
という事はここは学院長室で。
いやナインお前、そんなとこに隠し部屋作っちゃダメだろ。
どっかの魔法魔術学校でも流石に校長室には秘密の部屋は作らなかったぞ。
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