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卒業式の翌日、王都は勇者の召喚を祝う召喚祭でそれなりの賑いを見せていた。
「ハァ……」
それを王城の窓から眺めて、俺は決して小さくないため息を吐く。
俺がただの一般人だったのなら、昨日出来たばかりの彼女とデートするのだろうが、生憎と俺は帝であり、召喚の護衛という召喚が行なわれるまで暇でしかない役割があって、アウラとのデートはお預けである。
「あー、面倒くせぇな……。
アウラも怒ってたし、サボっちまおうかな……?」
アウラは今、マリー達と一緒に祭りに来ている筈だし、今からでも合流してこようかな?
「そんなこと出来ると思ってんのか?」
「ビックリするから、いきなり後ろに現れないでくれよ。父さん」
後ろを振り向けば、何時から其処に居たのか父さんが腕を組んで、壁に寄り掛かっていた。
「とても驚いているような顔には見えないが?」
「ヘルメットしてるから顔見えないっての」
「それで?なんで、こないだの娘が怒ってるから護衛任務をサボるんだ?」
「何でも良いだろ」
「まぁ、そうだな。
俺も馬に蹴られたくないから、これ以上は聞かない事にする。
だが、護衛任務はしっかりやってもらうぞ。
きっと、もうすぐ何か起こるからな」
「はぁ?何かって何?」
「勇者召喚が提案から二週間以上掛かった理由の1つに各国へ通知を送るというものがあった」
「それが?」
首を傾げる俺に父さんは呆れたようにため息を吐く。
「気づかないのか?
各国へ通知を送るって事は、帝国も今日、勇者召喚が行なわれる事を知っているという事だ」
「!?」
「きっと何か仕掛けてくるから真面目にやれって事だ」
「……分かった」
俺が頷くと父さんは小さな笑みを浮かべ、手をヒラヒラ振りながら去っていった。
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