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その姿を見て思わず嘲笑した後、ふらふらと引き込まれるように、中に入った。
「いらっしゃいませ」
普通の、どこにでもあるような喫茶店。
それなのに、不思議と現実感が無いのは、目の前にいる店員さんが思いの外カッコ良かったからか、心が荒みすぎているからか。
「……アメリカン、一つ」
「店内でお召し上がりですか?」
ずぶ濡れの状態で、店内に居るのは迷惑かもしれない――少し返事を躊躇っていると、思いがけない言葉を掛けてくる。
「もしよろしければ、ゆっくりしていって下さい。あと、これしかないですけど――」
差し出されたのは、タオルのお手拭き。
「あ……ありがとうございます」
会計を済ませ、出てきたコーヒーを手に二階の客席に上がり、窓際の席に腰を掛けた。
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