黒×紫

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「ひな、携帯どこ。」 「さっきソファーに置いてたやろ。」 問いかける俺に目もくれずにスポーツ雑誌ばかりに集中していながら、的確に在処を教えてくれるコイツ。 何だか、俺って簡単な奴なんかな、とか思い始めてしまえば機嫌を損ねてしまう俺の面倒くさい所。 だけど、コイツは、そんな俺にいつだって直ぐに気づいてくれるから。 「なんや、いきなり不機嫌やな?」 なんて けらけら笑うと少し細められる真ん丸い垂れ目と惜し気もなく見せつける八重歯。 「‥誰のせいやと思ってんねん、」 「ふはっ、俺のせいやろ?てゆーか、お前携帯何処とか嘘つかんでも隣こればええんに。」 コイツ、気づいてたんか。 まあ、コイツの座るソファーに携帯を置き去りにして下手な芝居をかましたのは俺。 「うっさいわ。お前がそんなにずっと読んでるからやろ」 無性に悔しくて半分ぐらい読んでいたらしい雑誌を無理矢理奪って。取り返そうと上げた顔に近付いて、接吻を落としてやった。 (偽りも、悪くない) end
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