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狭い教室の中、目の端に映るのは真っ白な菊
香田博文が、この教室に居た、たった一つの証
「こんなに呆気なく人は死ぬんだね…」
「ああ…残念だがな」
香田博文
日々の過労と苦悩に耐え切れなくなった自殺として学校では処理された
迅速に死体は葬られ、既に亡骸さえもこの世には存在しないのだ
『あはは…!』
『だから、ここはXだって言ってるだろ』
教室では勉強したり余裕の有るものは友人と楽しげに話す中
証を気にする者は誰も居ない
それだけ香田の人望が薄かったのか
周りの人間が死ぬという事に何も思わないのかは分からない
それでも
この教室に真面な人が居ないのだけは分かった
「……」
少なくとも一佐は真面な人間だろう
唇を噛みしめて苦悩の顔を浮かべている
きっと、俺が悩みを聞いてあげていれば、俺がちゃんとしていれば
そんな事を延々と考え続けているんだろう
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