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足を止め覗き見る。
そこには数人の隊士に囲まれた青年がいた。
その青年というのが、午前の巡察で話しかけてきたあの隊士である。
名前知らないや…。
かなり失礼なことを思いつつ、やはり面倒はごめんだと尾崎は見て見ぬ振り。
「あっ尾崎!!」
できなかった。
思いっきり名指しされ、これでは無視できない。
と、いうより自分に気付いていたことに驚きだ。
…そんなに目立っていたのかな?
尾崎は渋々物陰から出ることにした。
「あ?なんだお前…見ない顔だな」
「新入りか?」
「馬詰ぇ、隊内じゃ友達作れないからって新入りにいくのかよ」
「かわいそーじゃねぇか。お前みたいなドン臭に寄ってこられちゃ」
古株なのだが。むしろあんた方より先輩なのだが。
思いはしつつも、どうでもいいかと投げやりな尾崎。
仏頂面で彼らのやり取りを見ていた。
「坊主、こんな奴とつるむことないぜ」
「あーほんとさ。ドン臭が移っちまう」
「……」
特に反応はしない尾崎。ちらりと青年を見れば、唇をきゅっと結びひたすら暴言に耐えている。
ふむ、と尾崎は目を細めた。
少し前ならばこんなことは思いもしなかっただろうに。
最近の自分は、どうにもおかしくなってしまったようだ。
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