番外編⑤

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   わたしはパンフレットを閉じ、神谷さんがいるキッチンに向かう。 芳ばしい香りが立ち込めるキッチンに、普段着の神谷さんが立っている。 知らないでしょう? ただ、それだけで、どうしようもなく幸せを感じてしまうこと。 一緒に暮らし始めて数ヶ月が経つというのに。 わたしは未だに、神谷さんの声に、仕草にドキドキしている。 「神谷さん」 呼び掛ければ、わたしの声に顔だけを向ける神谷さん。 機嫌直して? 甘えるようにギュッとしがみつくと、神谷さんは驚いたようにビクリと肩を揺らした。
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