Winter Lovers

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「月征くんと付き合い始めたの? 良かったね」 綾に肩を叩かれて、直が振り向くと、艶やかな笑顔で直はそう言われた。面と向かって祝福されると、面映ゆくて仕方ないし、返す言葉もうまく見つからない。 「えと…あ、綾さんもご結婚おめでとうございます」 「ありがとう。でも、苗字も変わってないし、前から一緒に暮らしてたし、実は実感薄いんだ」 と、謙虚に言う綾の笑顔は、去年より幸せそうに見える…のは、直の気のせいだろうか。 変わるものと変わらないもの。例えば。 歩き出す時に真っ先に伸ばされる手。自分のために合わせてくれる歩調も会話も、彼女の証と言われてるみたいで、直には嬉しくてたまらない。でも、隣にいるだけでドキドキしてしまう鼓動は、片想いの時から変わらないし、一生慣れそうもない。 「桐生さんと何話してたの?」 彼らと別れてから、月征がそっと直に聞く。 「大したことでは…」 「そう?」 「はい」 「なにかあったら、俺に言ってな」 「はい。月征先輩、今年もよろしくお願いします」 「こちらこそ」 くしゃっと月征は直の髪を撫でる。毎年毎年、この挨拶、月征と言えたらいいな…。そんなことを思いながら、直は新しい年の訪れを噛みしめるように、階段をいっぽずつ降りた。                       Winter Lovers 完
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