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「え、ええ、ありがとう」
羽崎は少々戸惑いながらも結城と黒羽に視線を戻す。
「彼は、一宮柾。彼も戦専1年目。……キリヤさん、もしかしてこの人たちが新しい入居者?」
キリヤは笑顔のまま頷いた。
結城らからすれば、違和感抜群である。
だが、話からすると、彼女は同居人の1人らしい。
「オレが黒羽で、これが結城ユウトだ」
「よかった! じゃあ、柾を止めておいて正解だったわ」
黒羽が紹介すれば、羽崎は笑顔で手を合わせる。
若干、“止める”の認識が違う気がするのは、結城の気のせいではないはずだ。
「で? なんでこんな感じになったのかな」
キリヤはかがみ、指先で一宮の金髪を引っ張る。
「いきなりよ。1人で歩いてたら後ろから、柾が来て荷物を渡されて」
溜息をつきながら言うと、羽崎は大通り側に置いてあった袋を持ってくる。
袋の中には、野菜やら魚やらがチラリと見えた。
「で、追ってたら人だかりができてて、人に聞いたら「不良と悪魔が一触即発」って言うんだもの。訳分からないわよ。
一宮の家の決まりではしょうがないけれど、人のいるところで、だったし。万が一戦闘になったら……だから、ね」
思いっきりやっちゃったのよ。茶目っ気たっぷりに舌を出した。
「結局くろぶが火種、か」
「そうなると思う」
ふーん。とキリヤは地面に転がった一宮の枹を拾う。
「野次馬が散ったのは?」
言いながら腰辺り、一宮の羽織ったシャツを少し上げる。枹を収納できるホルダーの様なものがそこにはあった。
キリヤはそこに、枹をしまう。
「学園の演劇部に、濡れ衣かぶってもらったのよ」
さらっと、悪びれる様子もなく羽崎は述べる。
結城も先程まで、演劇部だと思っていた。
ちゃっかりしている。いや、それで解決とはいかないだろうが。
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