イチ

6/16
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「しょうがないなぁ…」 「うわっ…」 僕を包み込んでいた、彼の身体がほんのりピンク色になった。 「怖がらないで大丈夫。触ってごらん?」 目の前に出された、すこし小さな手のひら。 「う、そ…」 触ろうとした自分の手が、彼の手のひらをスルリと通り抜けた。なんで…?こうして俺を抱き締めているのは彼なのに。彼に触れない。 「ふふっ、びっくりしたでしょ?信じてくれた?それより僕ね、ゆうとくんの傷を癒すためにこっちに来たの」 「傷…?」 「うん!心の傷は癒せないから、ゆうとくんの身体についた傷、治そうと思って」 身体についた傷。彼は僕の全てを知っていると言っていたから、多分僕が自傷行為をしていることも分かってるんだ。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!