◆プロローグ◆

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欲しい、つまり、自分で作るのではなく、他人に与えてもらう 客観的視点から、ぼくという人間を図ってもらう 観察してもらう 傍観してもらう その必要がある どんなに陳腐でありふれているものでもいいから、僕の立場ではなく本質を―――、示した呼称が欲しかった 中学二年生、という肩書とか、奇術師の息子、という肩書とか、哀払奇術団次期エース、という肩書とか、そういうのではなく ぼく自身を表す、肩書 婉曲的にではなく、直接的にぼくを表す言葉が欲しかったのだ つまるところ、個性が欲しかった 個性的である、証拠が、証明が欲しかった これもまあ、中学二年生にはありがちな悩みだと思うが、しかしぼくにとっては死活問題 きっとぼくにも個性はあるのだろう 誰かがぼくの一部を見て、「ああ、こいつはぼくだな」とか思える部分はあるのだろう。ないわけがない
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