第4話 嘘も方便

42/42
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
  ガブリエルは謎の札を見て、 「これは何なんでしょう? 紙に何か書かれていて、燃えてもない?」 あまりに不自然な札に違和感を感じていた。 直後、ディダが崩れ、座り込んでしまった。 相当熱かったのか、未だに背中から湯気が上がっていた。 ディダの顔を見れば、力を使い果たしたかの様に、目に生気が宿って居なかった。 麟はそれを見て、いきなりディダの胸ぐらを掴んで言った。 「貴様! 邪魔をしなかったら、奴等を助けられただろうに!!」 かなり苛立って叫んではいるが、同時に手は震え、目から涙が流れ落ちていた。 力なくディダはゆっくり話し出した。 「僕もある、助けられた筈の沢山の命を守れなかった。あの人もだ……でも、今なら少し分かるようになったよ。大切な君を守りたかったから、だから同じ気持ちなんだよ皆、守るも守りたいのも……」 そのままディダは気を失ってしまった。 麟はディダの話に腹を立てるが、理解もしていた。 自分を守ろうとする者も、自分をかえりみず、命を助けようとする者、どちらもただ守りたいと言う気持ちだけで、決して違うくはなかった。 ただ感情の強さだけだと、麟は分かってしまった。 「大馬鹿者目が! お前達、戻る前にコイツを運べ、後、その札まだ呪が残っているから気を付けろ」 ミカエルとウリエルは渋々ながらも、ディダを担ぎ、ガブリエルもその札に呪が残っていると言われて、ミカエルとウリエルの後を追った。 麟だけとなり、 「さて、宗教沙汰はまず一段落だが、この様子だと、まだ終わっていないのだな」 呪の札をいきなり触ったかと思えば、その札は勢いよく、燃え上がった。 「札の呪の感触からして、総十と同じ者、多分、例の腐った件は、そいつだろうな。さてと、どう報いを受けてもらうか」 麟はそう言い、手をサッと灰と化した男2人の屍を土へと沈ませ、その辺にあった大きな石を2つ、先程の土へと沈ませた場所へと置き、歩き出した。  
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!