序章 そんなことは突然起きるわけで…

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光の加減で入り口を見た限り、どうやらここは土倉らしい。 ゆっくりと近付いてくる人影は、二人とも着物姿、袴も着ている。 脇には二人とも太刀と脇差しの双振り。 淡くぼんやり見えはじめた行灯を持っている方は、少し細身で。 けれど、なよなよした感じではなく、まるで柳の葉…と、でも言うか。 しなやかな鋭さが滲み出ている。 歳は俺より、三つ、四つ上だろうか? 長い黒髪を上で結い上げ、いたずらっ子みたいな笑顔のその人は。 俺と目が合うとにっこりと目を細めた。 …なんか、優しそうな人… その隣に居る、長身で黒髪を首の付け根辺りでくくった人…。 不機嫌そうな鋭い眼孔で睨まれてんだけど、かなり美丈夫。 つーか…なんか、見覚えがある…ような…? 目をぱちぱちしてから、少し闇に慣れた目で見つめ返していると。 「土方さん、この子です、空から降ってきた子」 「…ぇ…?」 「…本当に降ってきたのか、総司?ただの小汚ない乳臭いガキにしか見えねぇぞ…」 土方さん、て…呼んだ? この怖そうなお兄さんを、土方さんって… 「…土方、と…ぃぞぅ…?!」 「…!ほぅ、俺の事を知っているのか?ガキ」 掠れた声で呟いた名前は、当人には聞き取れたようで。 一度鼻で笑うと、眉を八の字に寄せて一歩近付いてくる。 おいおい…なんの冗談だよ、これ… 髪を切った、洋装の写真しか見たことなかったから気が付くのが遅れた。 確かにこの人は、信じられないけど…土方歳三。 鬼の新撰組副長。 じゃあ、こっちの人は… 「…沖、た…そぅ…ぃ?」 「ありゃ…私の事もご存知なんですかぁ?」 否定しない、って事は間違いなく。 多分、本当にご本人様。 清水の舞台から落ちたら、なんとそこは… 幕末でした、なんて…あり? 神様、仏様、俺はいったい…どうなるんですか?! 神様、仏様、誰でもいいから助けてー!
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