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「………えっ?」
目が覚めて、遼は目を丸くした。パチパチと瞬きをする。しかし、目の前の光景は変わらない。
「な、なんで和麻が目の前で寝てんの…?」
遼の目の前には、まだ少し赤い顔をした紺野が眠っていた。吐息が穏やかなので、熱はある程度下がったんだろう。
「ちょ……っ」
勢いよく跳ね起きると、身体から掛け布団がバサッと落ちて、くしゃくしゃになりながら紺野の上に被さった。
「一回起きたのか。起こしてくれれば良かったのに。まったく…人の心配より自分の心配しろっての。」
遼は立ち上がると、調理場に行って、昨日炊いておいた少量の白飯を手持ちの小さな鍋に入れ、お粥を作った。
「自分のも作るかな。」
と適当に卵を割って目玉焼きにし、醤油か塩コショウか迷う。
「うーん……塩コショウで。」
ついでに紺野のお粥にも塩で味付け。味見をして、少し足りないくらいがちょうどいい。
「和麻、起きて。」
「ん、ぅ………」
揺り動かすように起こすと、ぼんやりと目を開いて少しの間惚ける紺野。そして口を開くも声が出ない様だ。
「あ、口開けて寝たでしょ?はい、ポカリ。」
遼から渡されたペットボトルに少し驚いたが、紺野はそれを起き上がってからおとなしく飲んだ。さらに、小さく盛られたお粥が渡される。
「食べて。そうじゃないと、先生からもらった薬飲めないから。」
「……いらない」
紺野はお粥を見ながらぼんやりとそう言うが、遼はそれを許さなかった。
「まったく……勉強出来るんだから、こういう時のご飯の重要性は知ってるでしょ!ほら、文句言わずに食べる!」
遼は紺野から器をひったくると、スプーンで少し取り、差し出した。
「はい、口開けて!」
「………ん。」
「はい。」
「…は、ぁむ…」
紺野はそれを見ていたが、ゆっくりとそれを食べた。遼が差し出したお粥を、少しずつ、少しずつ食べていった。
「………よし、いいでしょ。はい、薬飲んで。」
「…ん。」
紺野は遼の言われるまま薬を受け取り、飲んだ。その様子に、遼は少し違和感を感じる。
「和麻?」
「……んぅ?」
「……舐めて。」
「………んむ…」
もしもの時のために持っていたのど飴を摘まんで差し出すと、紺野は指ごと咥えた。さらに、そのまま舐め始める。
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