第五章 殺害動機

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  「まったくだ。ここに摘めてる中村って奴なんざ、ろくな刑事じゃねぇからな」 「さぁ、そんな人は知りませんが」  富永の事情聴取に関して、今回中村は担当していない。だが身内を悪く言う酒出に、気持ちが開けたのか富永の表情が若干緩んだ。 「じゃあ、ぼちぼち始めるとしようか」  酒出の合図で、酒口と松本が着席する。  事件関係者の富永が同席した状態で、捜査会議が始まりそうな雰囲気となる。酒出は、そんな事など気にも止めずに語り出す。 「今回のヤマのガイシャは、野口 久司ってケチな料理評論家だ」 「酒出警部補。余計な事は、言わないでいただけますか」  柿崎が釘を刺すが、酒出はそんな事など気にしていない。 「そんなケチな男が、大事な弟とその彼女を間接的に殺しやがった。こんな事で、兄さんが恨んでるだろうと警察は容疑をかけた訳だ」 「そうです。証拠も無いのに、容疑者扱いでしたよ」
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