恋人契約……。

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.     2月14日  和紗と約束したファミレスに少し早めに着いたオレは、携帯電話を徐に開いて時間を潰していた。 「はい、これ」 「えっ、うそ! 嬉しいなぁ」  隣の席で若い男女の会話が耳に届いてふと視線を移した。  正面に見える青年は受け取った赤い包み箱を手にしながら満遍の笑みを浮かべていた。 「甘い物大丈夫?」 「うん、平気」  二人の会話から今日がバレンタインだということを改めて思いだしていた。  青年の照れを隠す様子から見て、二人の恋愛はまだ日が浅い事を想像しては、和紗が来るのを待っていた。  友達契約……。  あの日交わした約束はオレの胸を締めつけるかのように、苦しめていたんだ。  好きなんだと伝えたい気持ちを友達契約という約束が、分厚い壁になっていた。  ……、それと。  オレは心のどこかであの人を、まだ待っていたから……。 .
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