第1章 彼を知り…

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第1章 彼を知り…

(2) メジャーアップデート直後 ・・・  「デスシム」内部歴01年10月1日。  この日…午前0:00。「デスシム」のシステムには、「大規模な」メジャーアップデートが行われた。メジャーアップデートとはそもそも大規模なものだが…敢えて、重複を承知で「大規模な…」と言いたくなるほどの改変が「Face Blog ER」のコンテンツとしてアナウンスされたため、プレイヤーたちは期待に胸を膨らませていたのだ。  2206年時点でも、伝統的なお祭り騒ぎ「カウントダウン・フェスティバル」の風習は残っており、一部のプレイヤーは各々が滞在するタウンの広場などに誰からともなく参集して午前0:00の到来を待っていた…のだが…残念ながらマップ上のどこにも、カウントダウンを楽しめた場所は無かった。  前日の午後11時50分。「Face Blog ER」のアナウンスを良く読めば書いてあったとおり、アップデートに要する内部時間で10分程の間、アップデート内容の整合性を確保するため、各プレイヤーはパーソナル・エリアへ強制待避となり、他のプレイヤーとの接触が制限されたからだ。  予告通りその10分間でアップデートは完了し、午前0:00を迎えると同時に新しい仕様による「デスシム」世界が幕を開けた。「土砂降り」の「豪雨」とともに…  カウントダウンをやる気満々だったプレイヤーたちは、強制待避から解かれると、カウントダウンすべき時刻が既に過ぎたことを知ると同時に…ズブ濡れになった。  不平の声さえ聞き取れないほどに雨は激しく、プレイヤーたちは渋々と…いや…大慌てで雨を凌げる各々の常宿へと逃げ帰っていった。 ・・・
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