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「生まれる前から、決まってたんだよ」
その言葉と同時に、彼は私の知らない表情で口角をあげた。
一瞬後退りした私を逃さないとでも言うように、細い手首をギュッと掴まれ引き寄せられて。
目眩の中、
自分の鼓動だけがきっと私の本当の気持ちを知っている気がして、囚われるがままにその腕の中に崩れた。
「……おまえは俺のものだって事―――」
人と人の関係なんて脆く儚い。
それは長い長い地球の生命の、ほんの一瞬。
だけど私のDNAに刻み込まれた恋愛遺伝子は変わることなく
……きっと、ただ一人の人を求め続けてる。
深く絡み合った、微妙で曖昧で複雑なこの関係。
それを壊したいと強く願ったのは
彼なのか。
それとも……
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