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プロローグ
人は二度死ぬ。大体の人間は既に一度死んでいる。ちなみに私も既に一度死んでいる。
暗闇の中で何者かのうめき声が響き渡る。
その声に臆することなく、一人の全身白スーツの男が一歩一歩足を進めていく。
彼の足もとにはピンク色の小さな動物がいた。
鼻が長いという点ではまるでゾウのようだが、大きな耳といった特徴が無いことからゾウではないようだ。
その動物が急に高い鳴き声を響かせる。
それは何かが近づいてくることを一緒にいた男に伝える手段であった。
男は顔を上げた。上からは黒いコートに身を纏った男が二人が落ちてきていた。
二人とも片手剣を所持している。明らかに男と動物に襲い掛からうとしている。
対して男は見た目では何も所持しておらず、両手ともポケットに手を突っ込んでいる。
その立ち振る舞いは白スーツという紳士的な服装とは正反対の態度であり、野性的なオーラを全面的に出していた。
何よりもその落ち着きよう、男二人が同時に振り落とした剣を身軽に避けて見せると、白スーツの男はポケットからついに両手を出す。
同時に彼の両手には黒コートの男達の剣と同じ形の剣があった。
「こんな感じかな?」
余裕があることを示すように笑顔を見せると、黒コートの男達は挑発に乗るように襲い掛かる。
だが二人の動きを読み取った白スーツの男は右手の一振りで一人、左手の一振りでもう一人を確実に仕留める。
切られた男達は死体がそこに残ることはなく、灰になって消えていった。
「パオ、さんきゅ! 」
「パア! 」
両手の剣を消し、白スーツの男はピンクの動物の頭を撫でる。
またしばらく歩く。途中の道で同じような輩に何度も出くわしたが、それを問題なく無傷で潜り抜けてきた。
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