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「わぁ~可愛い花ね!」
「駄目よ。触っちゃ駄目よ?この花は毒があるんだから。」
昔、母からそう言われた十二歳の姉は、自分の下唇に触れて残念そうに花を見つめていた。
だから僕は、姉の喜ぶ顔が見たい僕は、母の目を盗んでこっそり掴んだんだ。
僕は四歳だった。
自己犠牲?
そんな陳腐なものなんかじゃない。
これはそんなものより、もっともっと甘美な蜜の味。
独占欲と呼ぶには軽薄で、支配欲と認める程僕は強くない。
ただ、嗚呼、ただただ…
姉さんが可愛すぎて愛おしい。
姉は僕がこっそり持ち帰った毒の花を見て喜んで笑ってくれた。
結局、触ったぐらいじゃ毒には犯されなかった。
毒は口に含まないと侵食しないのだと知った。
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