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「だから今度は銀座っ!
銀座の高級クラブに行くことにしたの。
きっとまた違った世界が見えるはず。
勝負をして…今まで以上に、水商売って面白いと思えたから今度は銀座で面白い世界を体験してくるね」
ニコニコと清々しそうに言うサエさんは本当にこの店にも…歌舞伎町ナンバーワンという名誉にも未練がなさそうだった。
「そうなんですか」
サエさんが決めたことだから私が止める権利があるわけでもない。
寂しい気持ちで心はいっぱいになった。
「でも、サエさん辞めるんだったら、約束を破ってもサエさんわからないじゃないですか」
感傷に浸っているとユキノちゃんが言う。
確かに辞めたら、命令どおりに売り上げを抜くかは確認できないし、いつまでに命令を達成しろという期限も言われていない。
「確かに、チェックはできないけどそれでもいいの。ふふ」
つまり…“実際には達成しなくてもいいよ”という意味合いが含まれている、というのか。
「なにそれ、馬鹿馬鹿しい命令。ふんっ!」
その意味合いをユキノちゃんも感じたらしく、怒った様子で従業員室から出て行ってしまった。
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