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「……どうしたの、俊輔……」
わたしがぽつりと呟つぶやくと、俊輔は手にした裸のミカンに一旦視線を向けた。
口に運ぶのかと思いきや、そのまま皮の上にポンと置く。
「どうしたのって、何が?」
「……」
固まるわたしに首を傾げ、高校の制服のネクタイを緩ゆるめてから「うーん」と伸び上がって後ろのベッドに寄りかかる。
「ふう。……まあ、とりあえず入れって。
遠慮すんなよ、亜優」
「ここ、わたしの部屋」
思わず反射的に突っ込みを入れてしまうほどテンプレ化したこのやりとり。
そう。
隣に住む俊輔がこうやって勝手にわたしの部屋でくつろぐのは日常茶飯事で、本来であれば特に驚くようなことではなかった。
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