プロローグ

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 二人と初めて出会ったのは、小学三年の春だった。  横須賀に引っ越してきたばかりのわたしがひとつ年上の兄に連れられ、登校班の待ち合わせ場所に着いた時、  桜の散る小さな教会の前のガードレールに、ランドセルを背負った二人が並んでちょこんと腰かけていた。 「引っ越してきた四年の成瀬章吾です。 こっちは妹。 ……ほら、亜優。自分で挨拶しろよ」  兄の後ろで俯うつむいていたわたしは恐る恐る顔を上げた。  興味深そうにわたしの顔を観察する和久井俊輔。  そして、そっぽを向いたままの二ノ宮拓己。  校帽に刺繍された濃いピンク色のラインから、二人が自分と同じ小学三年生だと分かった。
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