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「あと一年は長いよな」
友人も強くそう感じたようで、彼の気持ちを代弁した。
――一年は長い。だけど一年すら我慢できなくて、何が出来るか!
少年は父親が株の取引で、失敗したのを知っていた。
絶対に儲かると言われて手を出し、大幅なプラスに転じるまで、ついには支え切れなかったのを。
「俺、卒業したら国から出るよ」
「そいつはいい、あの嫌な顔を見なくて済むな」
地元どころか、親が国政に踏み出すらしく、国内に居る限り、不当な抑圧を受ける可能性があった。
それを避けるために外国に行く。高校に通う彼にしてみたら、それが魅力的に思えていた。
「お前はどうするんだ?」
自分とは違い、体の悪い親を持つので、空気の良いこの地域から動けないのを知っている。
だから答えがどうであれ、それを肯定してやるつもりでいた。
「親父の農園を手伝うよ。十年先も、二十年先も、芋を作って暮らしてるさ」
自嘲気味に自らの将来を語る。多くの人々は生まれ育った国に暮らし、その地域に骨を埋めて行く。大昔からの自然の摂理とも言えた。
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