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「そう言えば」
「ん?何だ」
「その妙な噂ってどんな噂ですか?」
「このアパートが実際に出る幽霊屋敷だそうだ」
「ああ、所謂心霊スポットと呼ばれるやつですか」
「噂は本当だったがな。そして、その噂の元になった幽霊はお前を怖がらそうと色々していたぞ」
「え?どんな事をされたんだ俺?怖いぞ」
まさか気がつかないうちに何かされていたのか?それとも、気がつかない事自体が俺の変化だったりするのかもしれない。
考え出したら限がなくなりそうだ。
「安心しなさい。どんな事をしても何の効果もなかったと私に泣き付いて来たくらいお前は強い」
「え?」
鈍いとも言うがなと続けられたような気がしたが気にしないようにしよう。
「さて、近所のご婦人方の噂話の種を提供しないように速やかに行動だ」
「了解」
「と、その前にこれの試験使用を頼まれていたんだった」
レディーウルフはそう言いながら、丸い手のひらサイズの妙な物についているボタンを押す。それ、何処から出したんですか?
俺の視線に気付いてレディーウルフは説明を始める。
「Dr.ラキアが言うには、これを使えばどんな騒音を出しても周囲には聞こえず、建物などの損壊は多少なら立体映像で誤魔化す装置だそうだ」
「それは便利ですね」
多少は騒がしくしても良いなら行動の幅が広がる。
「だが、試験段階だから期待しすぎないように」
「確かにそうですね」
隠密行動を疎かにしてしまいそうな甘えた考えが脳裏によぎったが、事前に釘を刺された。
試作品の試験なのだからデータ取りが本命で失敗は当たり前だ。そもそも今回の作戦目的は幽霊の捕獲。
この装置のデータ取りは、飽くまでもついでに出来たらいいな程度のおまけなのだ。
「ちなみにこれはDr.ラキア命名、隠せる君セカンドだそうだ」
「ファーストが存在したんですか?」
「格好いいからセカンドと言っていたよ」
「いきなりセカンドと言うことで」
「ああ、そうだ」
そんなとりとめの無いは話をしながら俺達は、何故か現場となったアパートへと向かうのだった。
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