方針と意思

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方針と意思

一行がジークフィーノ邸に辿り着くと、ミスティーアが門の前で待機していたのをレインが駆け寄った。 「ミスティ!」 「レイン、無事でしたわね。心配しておりましたのよ……それにしてもお揃いで」 肩にかかる髪を手で払い、レインの後ろに目を向け冷笑を浮かべるミスティーアに、ゴードが1歩前に出る。 「ミスティーアちゃん、これありがとうなぁ」 魔石を返されたミスティーアは「役に立ったでしょう?」と得意気に笑い、踵を返した。 「そこから入っては使用人たちに見付かりますわ、ついて来なさい」 一行は彼女に言われるがまま従い、後を追い掛ける。 裏門から邸の中に入った一行は、ミスティーアの書斎に着く。 彼女が椅子に座ると、レインの服の裾をマルシェが引っ張った。 「マルシェ知ってます、ビリビリの魔女さんです! お山でビリビリの神様と戦ってた人です!」 「うん、彼女はミスティ。雷鳴の魔女、ミスティーアだよ。僕の友達なんだ」 「! そうですわ、レインはワタクシの友人。楽にしてよくってよ、人間たち。レインの旅の仲間ですから、特別大目に見て差し上げます」 レインの紹介に気分を良くしたミスティーアに、全員が息を吐いた時だった。 「それで? どうしてユティお姉様がレインと共に居ますの? 城にお戻りになられたのではなくって?」 冷たい眼光を一点、ユティに向けるミスティーアに、ユティは杖を握り締めてレインの横に立つ。 「私は、レインと旅をしたいので、出てきました……」 「何を子供じみた我が儘を。ブライドが許したのですか?」 「ブライドは関係ない、もの」 「は?」 「はーどっこらしょー! やー疲れたなぁ、ミスティーアちゃん、お茶とか出んかなぁ。おいちゃんお酒だったらもっと嬉しいぞぉ」 不穏な二人の会話を遮るかの如く床に胡座をかき空の酒瓶を振るゴードに、ミスティーアの口の端は引き攣った。 「……ゴード。楽にしてよいとは言いましたけれど、随分な不躾な態度ですこと、信じられません」 「だっておいちゃん疲れた、年配者を労らんと酷い目を見るぞ?」 「ただの老害ですわ……ゴードのせいで気分を害しました、ティーセットがありますから勝手に淹れて飲んでよくってよ」 ゴードに気分を悪くしたミスティーアに、「じゃあみんな疲れてるし僕が淹れるよ」とレインが向かったお陰で、ミスティーアは紅茶を出す手伝いをする羽目となったのだった。
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