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--------1998年 アメリカ合衆国 カリフォルニア州
「姉さんなんだよ、こんなところに呼び出して」
太陽が輝き、あたり一面コントラストの利いた風景が広がっている。
家の裏庭に弟のヨハンを呼び出したヘイナは「よいしょ」と言って、
大きなバケツをその場に置く。
ヘイナは時計を見て小さく頷き、そして弟を見る。
「いいわ、予定通り」
ヨハンはなにが予定通りなのかと、首を傾げる。
けれど、姉の奇行はいつものことで、ある意味、姉の不可思議な
言動に対してヨハンには免疫があった。
「ヨハン、これからちょっとした儀式を行うから、それを手伝って」
ヨハンは冷や汗をかいていた。まばゆく輝く太陽と乾いた大地に
当てられたわけではない、それは、嫌な汗だった。
「姉さん、そのバケツに入ってる赤い液体なんだよ」
ヘイナが持ち歩くにはやけに大きい、そのバケツが妙に気にかかった
ヨハンは怪訝な顔で質問する。
「ああこれ?儀式の印を刻むのに使うのよ、ダニエルが言ってたの」
やけに大きい辞典のような本を片手に、なんでもないことのようにヘイナが
答える。
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