家族

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「なーんだ。お母様も料理が苦手だったのね」 「……苦手だったわよ。で、でも、今は違うわよ」 キルシェはザカートにばらされてしまった過去の恥ずかしさを誤魔化すように、ディアが先程見せたのと同じように口を尖らせた。 「おかあさまは、りょうりじょうずだもん!」 幼いローレルが母を庇い、二人に食ってかかる。 「まあ、お母さんの味方はローレルだけね」 自分を庇ってくれる幼い我が子の姿に感動を覚え、キルシェは力一杯ローレルを抱きめた。ローレルは母の温もりを全身に感じ、これでもかというほど表情を緩ます。 「……私も、今度は一緒にケーキを作る……」 仲むつまじい二人を見て羨ましく思ったのか、ディアは少し照れくさげに小さな声で、ケーキ作りに付き合うと言った。 キルシェはこうなることが分かっていたか、満面の笑みでディアに抱きついた。ディアはそれを照れて嫌がるような素振りをしたが、どこか嬉しそうだった。 そんな三人の姿をザカートは満足そうに眺め、ゆっくりとカップを口に運んでいた。
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