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その彼女の部分を拡大し、そっと指を置く。
呟いた声に同調させ、その指を斜めに一線。更に線対称になるようにもう一線。
すると、携帯に備わる画像修正のシステムが軌道。赤い線で指の軌跡が赤でなぞられ、それは結果的に赤いバツの印を模った。
※
黒崎燐は、窓の外の流れ行く見慣れない茨城の景色を眺めていた。
一世紀前は田舎と言うような言葉が相応しい田んぼの広がる世界だったらしいが、都市開発の進んだ現在ではひたすら建物が乱立しているだけだ。
見慣れない。そうは言っても、景色はさほど変わらない。町並みが少し違う、たったそれだけの面白味しかない世界だ。
しかし、それでも日常との差があるだけで少し楽しめる。
住宅街、店、大きなビル――並びは、自分の知る紅南市のそれとは少しだけ違うような気がした。
そんな中で、燐は先程の研究室で交わした話を思い出す。
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