夜と三日月と運命

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
こんなネオンだらけの街じゃ綺麗な夜空なんて見えやしない。 水色の髪の毛をなびかせながらみなとみらいはそう呟く。もちろんその声すらも街の雑踏に消え去ってしまうのだけれど。 普段彼は、繁華街特有のその騒がしさを嫌っていた、が、何故か今だけはその騒がしさが妙に心強かった。 「計画、中止か」 目を細めてその書類を見る。そこに書いてあるのは、国鉄の横浜線とみなとみらい線の直通計画が白紙になったという事実が淡々と綴られていた。 その事実をしばらく見つめていた彼の頬に一筋の涙が伝っていき、地面にぽたりと落ちた。 「走りたかったな、あの人と一緒に。私、走りたかった」 いつしか涙は大粒になってゆき、前も見えない程になってみなとみらいは道路の端に立ち止まってしまった。 涙が止まるのを願ってふい、と上を向く―――――視界に入ったのは濁った空では無く、人の顔。 幼い顔に不思議そうな表情を貼り付けた男がみなとみらいの方をじっと見下ろしていたのだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!