餓の章 神山兄弟

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指よりも少し太い幅を持つゴムの先からは、白い何かがはみ出している。 石灰を固めたチョークに似た色をしたそれは、まるで――――。 「骨……みたいだ」 頭に浮かんだ単語がそのまま出た。 息をのむ僕をよそに、眉間にシワを寄せながら彼は更にそれを自分の顔に近づけ臭いを嗅ぐ。 「おい、嘘だろ……」 彼は持っている手を動かしてそれを回転させると、ゴムだと思っていた黒ずんだものの上にうっすらと毛が生えているのが分かった。 「指じゃねえか、これ!」 叫びながら彼は反射的にそれを地面に投げつける。 指と思わしきものは血だまりと吐き捨てられたガムで汚れた床に叩きつけられて、骨と肉に分かれた。 「なんで指がこんなところに……」 地面に転がる圧迫されてベロベロに剥がれた皮膚と肉に僕は目を落とす。 例え指を挟んだとして、こんなになるまで強く扉は閉まらない。 つまり、もし扉に指を切断されてしまったのだとしたら、それは切断するまで力強く誰かが扉を閉めたことになる。 扉を開けて迫り来る何かから必死に自分を守ろうとする為なのか、それとも扉の向こうに逃げ込もうとする行為を阻む為か。 どちらにせよ、僕はその異常な光景を想像して鳥肌が立った。  
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