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「お前、超俺の好み。付き合ってよ」
全国No.1の暴走族、紅龍の総長である朔夜(さくや)は笑顔でそう言い放った。
「ふざけんなぁー!」
私は怒りの鉄拳を浴びせる。
幼なじみの朔夜は昔から私にばかりちょっかいを出してくる。
学校では結構モテるのに、何故か誰とも付き合わずに私にだけ。
私は逆に地味ないじめられっこ。
自分の言いたいことは一切言えずに、まともに話せるのは朔夜だけだった。
ちなみに朔夜は私のことを好きだと言っても単にコキ使いたいだけ。平たく言えばただのパシリだった。
「とにかく早く俺の昼飯買ってきてよ。彼女だったらそれくらいしてくれて当然でしょ?」
先の私の鉄拳によって三メートルほどぶっ飛んだ朔夜は、鼻から血を流しながらも微笑んでいる。端から見るとかなり不気味だ。
「いつから私はあんたの彼女になったんだ。そもそも告白にOKしたこと一度も……」
「キスしてあげるから」
――!
その瞬間、唇に伝わってきた柔らかい感触。
こうして私のファーストキスは奪われた。
頭が真っ白になる。
「死ねー!」
私は朔夜の脳天にかかと落としをぶちかました。
* * *
それから数ヶ月後。
私は嫌いだったはずの朔夜をいつの間にか好きになり、総長の女になっていた。朔夜が時折見せる優しさや頂点に立つ本物の男の貫禄に惹かれたんだろう。
いつしか箔(はく)がついた私をいじめる奴は居なくなり、毎日が楽しく平和な日々。
これからもずっと一緒に居ようね、朔夜。
――完――
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