33人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
【Date】3/11 09:11
【From】A.B.
生命の種を蒔く者の子コニー.アンフィニへ
このメッセージを受け取るだろう君が、間違いなく僕の探していた者である事を願う。
エデンへ帰れ。
僕は君という生命体“HS”の設計図を書いた者。
君の本当の名前=個体認識名称は“Infinity”。
今思えば我々は愚かだったとしか言いようがない。
君という存在は我々人類の犯した大きな間違いであるのだ。
30年ほど前の時代の試算通りに今の時代を迎えられたなら、現時点での世界の人口は90億を越えていた筈だ。
しかし実際には、人口爆発どころか人類は異常なスピードで人口減少を続けている。
原因は我々自身に有る。
そして君にも。
HSが我々の世界にもたらすもの、それが何であるのか誰も知るまい。
我々人類は踏み込んではならない神聖な領域に手を伸ばした。
かつて多くの者達が警告を発してきたというのに。
誰もがそこに人類の久遠の繁栄を夢見信じてしまった。
互いに生き残りを賭け変革を起こし続ける地球上の生態系。
それさえも支配できると勘違いしていた。
奢りが人を盲目にした。
人類は君と共存出来ると信じ込んでいる。
が、あらゆる生命が遺伝子に書き込まれている絶対的な命令を遂行する過程で我々人類は君に敗北するだろう。
たとえそれが君の預かり知らない偶然であったとしても…。
我々が描いた未来予想図は君の存在によって覆される。
君は人類にとっての脅威。
人類の姿をしているが本来は存在する筈のない生命。
誰もが君の本当の存在理由に気づいていない。
もし君の中にも我々人類と同じ「心」があるのなら、この大地に根づく事は諦めて欲しい。
人類が何も知らないまま突き進み引き返せなくなる前に。
エデンへ帰れ。
この大地に君が生きることを許された場所は唯一そこだけなのだ。
お願いだ。
人類の時代の最後など僕に見せないでくれ。
2039年 君の忘れ得ぬ記念日に。
最初のコメントを投稿しよう!