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1.
午前11時半を少し回った頃、俺は栄井の駅のロータリー沿いにあるミスタードーナツで待ち合わせをしていた。
今日は日曜日、店内は子供のうるさい兄弟喧嘩をほったらかしの家族連れやまだまだイモっぽさが抜けずせっかくのおしゃれも服に着せられてる感満載の中学生カップルなどで埋まっている。
俺は窓際のテーブルで意味もなく外を眺めていた。
しかしあまりにも長い、俺は待たされ過ぎた。相手がビビってすっぽかすならそれでもいい。
俺はこのポンデリングを食べ終えたら帰ろうと思った。そして、手を付けだした頃、村田は来た。
「おう、遅れてごめん」
まるで悪びれていない。それは結局ただの挨拶で、こちらの心情はあまり頭にないみたいだ。
「帰るところだった。実際俺はどうでもいいんだ」
俺が冷たく言うと、奴は急に慌てた。
「いや、申し訳ない。実際、理沙にバレててもしダメだったらどうしようって…」
全然言い訳になってない。自分の立場が悪くなると気弱なフリをして同情を引こうとする。泣けば何とかなると思う女は嫌いだが、こいつが輪をかけてむかつくのは男だということだ。
「上手くいったよ。あの娘は結局あたしの勘違いだと言うまでになった。もう大丈夫じゃないかな。嘘だと思うなら連絡してみたらいい」
浮気の火消しなんて全然乗り気じゃなかった。それも俺とおんなじ高校生のだ。村田は学校自体は違うが、俺が学校内で厄介な事の処理から恋のキューピッドまで何でもやってると聞いたらしく泣き付かれた。
「浮気するならリスクも喜んでしょえクソ野郎!」
俺の言葉に村田は項垂れながら小さくすみません、と言った。
でもこいつはその気が無くてもすみませんくらいは無限に出る。そんな風に思う。
「あの、これ…」
村田は裸のままで一万円札を渡した。
頼むから封筒くらい入れてくれ。
「ありがとう。ただな、次のやったら俺は理沙ちゃんの味方しかしない。あんな良い娘がお前みたいな奴に騙されてるなんて見てられないからな。じゃあ」
用は済んだ。短い時間ですらこんな奴と早く別れたい。それでも一途に愛する理沙ちゃんの精神構造が今一番知りたい。
俺は立ち上がり、店を出た。
後ろではドーナツ代も受け取って下さいと村田の声が聞こえた。
あんな奴に奢られてたまるか 。
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