絶体絶命

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銃口が隣同士に合わさることで、∞の文字を浮かび上がらせる。 そこから放たれるのは無数の炎の花弁。 そのどれもが、輝きを噴き散らかすデッドクロス自身を狙ったものではなかった。 「炎流具術……炎花!」 ブルーシートに覆われた壁。その付近にはボロボロです黒ずんだ大きな棚が並んでいる。 横長の引き出しが縦に六つほどある棚の中には、細工済みの“火達磨胡桃”。 全ての引き出しにめいっぱい詰め込まれたそれを、全て誘爆させる。 「“無限薔薇”!」 一瞬。 聴覚を破壊するかのような音と、視覚を焼き尽さんとする強烈な閃光。 二つが重なり合い、呼吸すらままならない熱風が辺りを舐め回した後で、 「……!?」 ビルのように巨大な薔薇が、天を向いてその場に咲いた。 小屋は一瞬で炭屑と化し、地面は引き剥がされ、周りの木々はなぎ倒される。 そんな爆心地の中心で、デッドクロスは不気味な笑みを浮かべていた。 「……素晴らしい」 未来永劫、この地に語り継がれるであろう凄まじい爆発。 無数の薔薇が巨大なひとつの薔薇となって、空に漂う雲さえかき消した。 その業炎の花が、虚空に咲いていたのはわずか数秒。 跡に残ったのは焼け焦げた大地と、巨大なクレーター。そして、その中央に立ち尽くす男。 彼の視界には、すでにスペンサーの姿はなかった。 「力を付けたか……何よりだ」 逆さ向きの十字架を背負い、ノーモーションからの跳躍でクレーターから外に出る。 「“失った体を探す女神がいた。七つの部位は自らが、魂と共に引き裂いた”」 口にするのは“聖書”の一節。焼け焦げた大地を背にして、彼は笑みのままに歩を進める。 「“地を割ったのは女神か悪魔か。どちらにせよ現れたものが、人間を天へ押し上げたのだ”」 “インフィニティ”の幹部が一人。 デッドクロスの、追跡が開始された。 ーーーーー
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