1話目

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「助けてくれ!」  さて通学路を歩いている最中に、もしこんなことを頼まれたならば人として助けようとするのは当たり前のことだろう。俺だって人なので助けようと思うのは当たり前なのだが、目の前の人物を見てるとその助けようという気持ちが萎えてくる。 「わかっているぞ!お前は只者ではないのだろう!?」  必死の形相でそう俺に訴えかけてくる目の前の同い年ぐらいの男。先にこの男の言葉を訂正させてもらえるならば、俺はどこにでもいる日本人です。何故、こいつを含め変な奴等は俺をみると只者じゃないというのだろうか?不思議でならない。 「俺は世界を救いに戻らねばならぬのだ。こんな変な世界から帰らなければ」  もうお分かり頂けただろうか? 俺が何故助けようとする気持ちが萎えるのか、それは目の前の人が世間一般的な常識に照らし合わせると『頭が少々可笑しい奴』となるからである。 腰にぶら下げているのは、日本では銃刀法に思いっきり喧嘩を売ってるのかというぐらいに引っかかってる西洋の剣。さらにさらに真っ赤なマントまで着用し、目はカラーコンタクトだか知らないが金色。髪の色が銀髪は少しばかり、コスプレに力を入れすぎではないだろうか? いや、待てよ?カツラの可能性もあるのか? 「頼む、お前が只者ではないことは分かっているんだ。俺をどうか元の世界に戻してくれ!」  懇願してくれているところ大変申し訳ないのですが、だから何故俺なら何とかできると毎度毎度押しかけてくる変な奴らは思うのだろうか? 小一時間問い詰めたい。やんわりと、「いや、無理ゲー」と伝えると、目の前の男は呆然としたように崩れ落ちた。どこまで演技派なんだこいつは。というか、毎度毎度押しかけてくる奴こんなのばっかりなんですが。  そんなことを考えていると、以前「お腹が減って帰れない」と意味不明なことをほざいていた奴に、10円の駄菓子を100円分あげたお返しに貰った『思った世界へといける魔法具』とやらを思い出し、鞄からとりだし目の前の男に投げてやる。効果は俺が日本に居ることで察してくれ。 すると男は一転して、目を輝かせるとありがとう!と口にすると、纏っていたマントを「これは例えどんな灼熱でも守れるマントだ受け取ってくれ」と俺に押し付けどこかへ走っていた。  ちなみに試しに纏ってみたがむしろ何故か暑くて死ねた。信じた俺が馬鹿だった。
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