第1章

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それから更に考えを巡らしているうちに路地を塞いでいた取巻き達の間で動きがあった。 道を塞ぐように立っていた奴らが道を開けるようにして素早く横に移動し、その奥から微塵も待ち望んでいなかった赤色の鎧に身を包んだ男が姿を現す。 「―――よぉ、シエル。 用件は何か、わかるよな?」 広場へと姿を現すなり奴はニヤニヤと腹立たしい笑みを浮かべながらオレへと問いかけてきた。 「……さっきの依頼の件だろ」 「へっ、わかってんじゃねぇか」 奴の問いかけに対し黙秘するというのも選択肢としてはあった。 だがこの後の流れを考えると今黙秘するのは愚策であり、例え奴の思う通りに事が運ぶとしても今は従うしかない。 「それじゃ俺が言いたい事もわかってるだろう?」 オレが奴の言葉に素直に答えている事でギレは調子に乗り、更に笑みを深めながら次なる問いを口にする。 ―――『依頼の受注権利を俺に寄こせ』、ギレはおそらくこう言いたいのだろう。 これまでの奴の言動なんかを考えればここまでの流れを推測する事自体は容易だ。 しかし今回の報復がどうなるかを左右するのはここから。 ……オレは今からギレの問いかけを答えたうえで拒否する。 そうなれば当然ギレは面白いぐらいに激昂するはずだ。 正念場はまさにその激昂した直後。 そこの受け答えさえ間違えなければ奴自身からの報復は回避する事が出来る……と思われる。 結局のところオレの安否を左右するのは全て奴の気分次第なのだ。 だからここからは全ての選択が運任せ、上手い感じに事が運ぶよう祈るしかない。
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