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生ビールは泡を立てて踊った。
大ジョッキ、摂氏マイナス五度。
ただし2メートルの体躯。
文字通りのビッグサイズを誇示するように揺れているのだ。
ビールは男に向けて放言する。
「カビだ。お前はカビだ。」
がたがたと。
興奮して叫ぶ。
「お前はカビだ。カビだ。お前はカビ。カビ。華美?」
執拗に、しかし淡泊に言う。
男はやがてその雑言ジョッキから離れていった。
カビでもいい。
カビだから、どうした。
これは夢なんだ。
ムキになってどうする。
そう言い聞かせるように、その男は早足に逃げていった。
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