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刀身で揺らめく光を放ちながら佳紀が即座に立ち上がる。
その表情は真剣その物、妖しい雰囲気さえ感じる程。
しかし、眼だけは玩具を持った子供の様に透き通った輝きを放っていた。
視線の先で佇む武明もまた、同じ眼で佳紀へと視線を送っている。
両者、再度『正眼の構え』で睨み合う。
ふと……一羽の雀が二人の間合いの間に割って入る様に床へと降り立つ。
雀はまるで探し物をするかの様に行ったり来たり……
何秒も経っていない時が、まるで止まってしまったかの様な静寂を生み出している。
20秒程してようやく、雀は落とし物を諦めたのか立ち止まりキョロキョロと辺りを見回し始める。
雀が飛び立つ。
両者の透き通った眼が、光の尾を残し接近。
床に響く両者の踏み込み。
流れる様な武明の二本の刀が、律動良く床に響く振動に合わせ、風を取り巻く螺旋を描く。
不規則に響く佳紀の踏み込み。
刀は白い輝きを放ちながら、時には円を、時には線を、一振り一振り焼き付ける様に消えて行く。
深く響く振動は交互に打ならされ、攻め攻められを繰り返す。
一歩も引かぬ攻防。
一撃も入らぬ攻防。
二人はまるで和太鼓の上で演舞を踊る様に技に技で尽くしていた。
そして、二人同時に床を打鳴らした時、ついに終演を迎える。
二人の刀はそれぞれ相手の喉元に刃を立てていた。
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