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僕が、彼女の名前を知らなかったのには、
店の方針があったからなんです。
そこの店のママ……
店と言うのは、新宿の外れに在る小さなパブのことです。
客が二十人も入れば、店内は満席になり、
息苦しくなりそうな……そんな気がした店でした。
僕は未だ満席の状態を見たことはありませんけど。
その店のママが、
「名前を教えちゃダメよ。
焦らして、少しでも数多く、
お客さんの足を通わすんだからね。
あなた達は、
ママがスカウトした見込みあるホステスなんですよ。
ママは二年前まではね、
銀座であの有名ナイトクラブで、
ホステスを務めていたのですからぁ」
店の女性は常時四五人は居て、
何も知らないその女性らに、誇らしげに話していたのよと、
それは後で律子から聞かされたことでした。
何処となく妖しげなママではありましたけどね。
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