scene001

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敬語を使っている時は陰があり、その並外れた容姿で少し近寄り難い人だと思っていた。 しかし、素の時はかなり子どもっぽい。無邪気というか警戒心が欠けてるというか…。本来は天真爛漫な表情豊かな人のようだ。 敬語ひとつでここまで変わるかと一層感心してしまった。 この素を知ってるのは僕と成瀬先生くらいだと思っている。危なっかしいにも関わらず上手く偽っているのだ。今まで貫けていたことが信じられない。 「…鈴城くん?」 「はい?」 綺麗なミルクティー色の瞳が心配そうに僕をじっと見ている。少しだけ先生の方が身長が高めなので見下ろされてるように感じ、反射的に眉間が寄った。 「…大丈夫?顔色悪いけど?」 額に持って来ようとする先生の手を躊躇無く払い落とす。 「体調はいつも通りです。それよりも今日はいろいろな方が来ているんですから、知らない人について行っちゃ駄目ですよ?あんた偶にぼんやりしてるって言うか心浮いてるので心配です」 何故僕がこの人の心配などしなければいけないのかと疑問に思うが、この人特有の雰囲気がそう思わせるのだと思う。 「えっ心配してくれるの?」 「してません」 「え、だって今言った」 「……」 「……」
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